壊れた少女の翼を治した男、大坪義明

大坪義明、彼の名を知っている人はいないと思います。
日本を変えるような素晴らしい人ではない、皆から愛される歌手でもない、皆を笑わせるお笑い芸人でもない、ただ普通の人なのですから。しかし、彼は、一人の少女の運命を大きく変えました。日本を、世界を変えるような大きな出来事ではありません。でも、彼が居なかったら、彼女は今この世にいないかもしれません。

大坪義明がその少女に出会ったのはある雨の日でした。家に帰らずふらふらしている少女。彼は、その少女が気になって仕方ありませんでした。その少女は、小学校高学年から中学生くらいの見た目。ぼろぼろの服を来ていました。たまらず大坪義明は、その少女に声をかけました。「お嬢さん、こんな遅い時間にどうなされたのですか」と。その少女は、話しかけられ、目を大きく見開きました。そして一言、「うっせーんだよ」と低く呟きました。彼は、その少女の一言に驚きましたが、続けて、「お嬢さん、目上の人にそんな言葉遣いは無いでしょう。何かあったのですか。貴女みたいな可愛らしい方が、そんな言葉遣いをするなんて、きっと事情があるに違いない」と優しく諭しました。少女は、唇を噛み締め、少しの間俯いていました。そして「あたしなんか生まれて来なければ良かった」と零しました。目には涙が溢れていました。しかしその少女は、泣かないように必死でした。彼は、優しく少女の頭を撫でました。すると少女は、咳を切ったように大声をあげ、泣き始めたのでした。

落ち着いた少女は、自分のことを彼に、ぽつりぽつりと話し始めました。少女の名前はミサキ。ミサキは、高校生になったばかりでした。小柄な体型と、童顔からか、若く見られるようでした。母親が亡くなってから、父親に暴力を振るわれるようになり、家を出てきたとのことでした。家を出てから一ヶ月近くになるそうです。よく見ると、ミサキの腕には根性焼きの跡、リストカットの跡が生々しく刻み込まれていました。
「おじさん、あ、お兄さん。じゃホテル行こっか」乾いたように笑い、彼をホテルに誘うミサキ。仕事もない、お金もない高校生のミサキが、生きていくためにはこうすることしか出来ないのです。
みかねた大坪義明は、ミサキを自分の家に連れて帰りました。そして、一緒に生活するようになりました。ある日の夜、ミサキが「なんで、なんで抱かないの。男の人なんて、それが目的なんでしょ。お父さんだって…」と彼に詰め寄りました。ミサキは、実の父親から性的虐待も受けていたのです。大坪義明は黙ってミサキを抱きしめようと手を広げました。ビクッとミサキがすくみ上がります。大坪義明は「ほら、怖いんだろ。無理しなくていいんだよ。自分を大切にしろよ。俺は嫌だと思ってる女を抱く趣味なんかないしな」と優しく笑いかけました。それを見たミサキは、声をあげて泣きました。「今までそんなに優しくしてくれた人はいなかった。みんなあたしなんかどうでもいいと思ってた」と。そして、大坪義明に抱きついて言いました。「あんたなら触られても怖くない。あたしなんかを大事にしてくれてありがとう」と。大坪義明は、笑いながら、ミサキの頭を優しく優しく撫でました。
その日以来ミサキは、少しずつではありますが、大坪義明の前で笑うようになりました。そして、いつしかミサキと付き合い、結婚しました。

死にそうになっていた、行くあてもなくさまよっていたミサキの運命を変えたのが大坪義明という男です。最初にも申し上げましたが、彼は世界を変えた素晴らしい人ではありません。世界中の人が知っている有名人でもありません。しかし、一人の少女の運命を変え、幸せへと導きました。彼は素晴らしい人だと思います。

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